基幹運動と実践運動に共有される精神
「実践運動」は「基幹運動」の成果と課題を引継ぎ、宗門内外の人々とつながりながら「あらゆる人々に阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝え、自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現」をめざし展開してゆく運動です。2012年4月より始動した「実践運動」は、それ以前に展開されてきた「基幹運動」を、さらに発展させる為の運動です。これまでの「基幹運動」は、「視点が内向きになりがち」「教団外への働きかけが不十分」といった課題がありました。これを克服するため「教団及び寺院の外にアプローチする」「3年間という期間の中での具体的な達成目標を掲げる」事を意識し、改められた運動が実践運動なのです。つまり「いのちの尊さにめざめる同朋一人ひとりが自覚を深め、浄土真宗のみ教えを社会に広め、実践してゆく活動」なのです。
*2012年度より、3年を1期間として進められてきた「実践運動」でしたが、これまでの歩みより、2020年度から4年を1期間とすることになりました。(現在第4期の3年目)
『宗制』と実践運動
2007年に改められた『宗制』には「本宗門は、その教えによって、本願名号を聞信し念仏する人々の同朋教団であり、あらゆる人々に阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝え、もって自他共に心豊かに生きることのできる社会の 実現に貢献するものである」(『宗制』)との一文が加えられました。その後、親鸞聖人750回大遠忌法要を迎え、2012年以降、宗門は新体制・新組織のもとで実動を開始しました。その特徴はあらゆる人々を対象に、教えを伝えることにより「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献する」運動(実践運動)を実現していくことに体現されています。まさに実践運動は宗務全体の基本理念なのです。
『念仏者の生き方』と実践運動
2016年10月1日、第25代専如門主伝灯奉告法要初日に、ご親教にお立ちになった、ご門主様は『念仏者の生き方』をお示しになられ、「仏法を依りどころとして生きていくことで、私たちは他者の喜びを自らの喜びとし、他者の苦しみを自らの苦しみとするなど、少しでも仏さまのお心にかなう生き方を目指し、精一杯努力させていただく人間となるのです」と、念仏者の具体的な生き方をお示しくださいました。さらに、「国の内外、あらゆる人びとに阿弥陀如来の智慧と慈悲を正しく、わかりやすく伝え、そのお心にかなうよう私たち一人ひとりが行動することにより、自他ともに心豊かに生きていくことのできる社会の実現に努めたい」と、『念仏者の生き方』が実践運動に通じるとのお示しがなされているのです。また、2018年秋の法要には、ご親教にて『念仏者の生き方』の肝要を四カ条の言葉にまとめられた「私たちのちかい」についてお述べになりました。そして2021年春の法要・立教開宗記念法要の後、新たなご親教として「浄土真宗のみ教え」をお示しになられました。
これらは私たちの生活実践についての大切なご教示であり、信仰と実践の課題について考える上での基礎となるものと重く受け止め、重点プロジェクトを含め、東京教区の実践運動も展開されています。
東京教区における実践運動の特徴
「首都圏特区」が含まれる東京教区は「開教」推進の可能性が期待できる地域を含む、全国でも特異な環境にあります。築地別院から築地本願寺へと体制移行が成された一つの理由でもあると思われます。しかし、首都圏における開教は築地本願寺だけが担うものではありません。東京教区・教区内寺院の活動がそのまま都市開教に繋がることを意識すべきです。その意味でも教区内寺院の活性化は大切な実践運動であり、今後は、益々築地本願寺との共存・共栄を図ることが求められます。
また、東京教区は日本の政治経済の中心地を抱えることも特異な点です。東京で始まったことが徐々に地方に波及するあらゆる例を見れば、東京教区に生きる人々の生き方が全国に影響を及ぼせるはずだと思います。
これらの地域的な特徴を踏まえ、これまでの東京教区の実践運動は展開されてきました。例えば、東京教区において山積する課題の一つとして、特に首都圏に多くみられる宗教的浮遊層に対し、新たな開教を意識しながら、通過儀礼を推奨する取り組みが行われてきました。
さらに、非戦平和を多くの人々に呼びかける運動として「へいわフォーラム」も開催しています。千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要の前日に築地本願寺を会場に開催できることも、東京教区の実践運動の特徴の一つと言えます。
運動の継続性について
これら上記の取り組みを含め、東京教区ではその他多くの活動が行われています。これらは非常に重要なものですが、いつまでも永続的に続けられるわけではありません。変化の速い時代において、活動そのものが時代に適応したものであるかを含め、見直す必要性を想定しておくことも大事な視点です。そこで2018年度より、全ての取り組みに対し、時限的に活動の検証結果を踏まえながら精査し、継続の有無を判断する仕組みを整えました。全ての活動に対してアンケートなどを行うことで検証結果を得、検証結果を蓄積しながら、活動の継続に対する評価を得て、それぞれの取り組みに活かしていきます。
新型コロナウイルス感染症拡大における実践運動
2020年度より、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から、諸活動の多くをオンライン型に移行して開催してきました。ウェブ会議システムの活用や、サイボウズによる情報共有体制の構築、研修会のLIVE配信などです。今年度も、必要に応じたコロナ対策を行い引き続きオンライン型もうまく活用しながら、コロナに関して如何なる情況にあっても運動が滞らないような仕組みづくりを構築できるよう努めてまいります。
東京教区委員会はまた、宗派と取り組みの連携を図りながら、人々の生きづらさを深刻な社会問題として受け止め、分かち合いの会や、心豊かな笑顔が提供できる場作りを慎重に進めていきます。